厚生労働省によると、入社から3年以内に離職する新卒者は毎年3割以上にのぼります。
※参考:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します
そのため、社会人経験が3年未満の「第二新卒」で転職することは、決して珍しいことではありません。
とはいえ、職歴が浅いうちの転職について「実際どうなんだろう」と不安に感じる人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、第二新卒で転職した経験がある158人に「第二新卒での転職に踏み切ったきっかけ」や「第二新卒で転職したほうがいい理由」についてアンケート調査を行いました。
- 調査対象:第二新卒で転職した経験がある人
- 調査期間:2024年10月31日~11月14日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:158人(女性94人/男性64人)
- 回答者の年代:20代 44.3%/30代 35.4%/40代 13.3%/50代以上 7.0%
第二新卒で転職に踏み切ったきっかけは「仕事内容が合わない」
第二新卒で転職に踏み切ったきっかけの1位は「仕事内容が合わない(27.2%)」でした。
2位、3位は僅差で「過重労働や休日出勤(24.7%)」「収入への不満(23.4%)」となっています。
前向きな理由で転職を決意した人は少数。
大半の人が、現職での仕事内容や労働環境、給与、人間関係に対する不満から脱却したいという理由を挙げていました。
1位 仕事内容が合わない
- 入社当初は、専門的なスキルを活かした業務ができると思っていたのですが、実際にはルーチンワークが多く、成長を感じられない日々が続いたため(30代 男性)
- 選んだ業種が自分の期待と異なると感じたため(20代 女性)
- 想像していた仕事よりも雑務作業が多かったから(20代 女性)
- 新卒で入った会社が自分のやりたい分野の業種ではなかったので、希望外の勤務地に配属されたのをきっかけに退社しました(20代 男性)
- 仕事内容が自分に向いていなかったから(30代 男性)
「仕事内容が合わない」と回答した人の理由は大きく3つに分けられます。
1つ目は、「思っていたような仕事ではなかった」など、入社前に想像していた仕事内容と実際の仕事内容が異なっていたケース。
2つ目は、「希望していない部署に配属された」「雑用ばかりさせられる」など、やりたいと思っていた仕事に携われなかったケース。
そして3つ目は、希望していた仕事に就いたものの、実際に働いてみると自分には向いていないことがわかったケースです。
第二新卒で転職に踏み切ったきっかけとして、理想と現実のギャップが大きな原因であるとわかりました。
2位 過重労働や休日出勤
- 思っていたよりも残業や休日出勤が多く辛かったから(20代 女性)
- 勤務時間や労働内容が過酷で体調を崩してしまい、心身ともに疲弊してしまったから(20代 男性)
- 激務で未来が見えなかったため。体力的に厳しいと思った(20代 女性)
「激務すぎる」「残業が多い」「休みの日にも頻繁に仕事が入る」など、過重労働や休日出勤の多さがきっかけで、転職に踏み切った人も。
なかには、「サービス残業ばかりだった」「体調を崩してしまった」など、辛抱して続けるべきではないケースもありました。
3位 収入への不満
- 思っていたよりも給与が良くなかったから(20代 女性)
- 給与が低く生活が成り立たなかったから(30代 女性)
- ボーナスについて入社前に聞いていた内容と違う部分があり、結果的に想定年収が大幅に下がってしまったため(20代 女性)
収入への不満が転職のきっかけになった人も2割を超えました。
とくに「思っていたよりも少なかった」と回答した人が多くなっています。
職務経験が浅い新卒者は、初任給やボーナスが低く設定されることが一般的です。
また業界や企業によって給与には大きな差があります。
そのため、「入社時に聞いていた給料よりも少ない」「友人や知人と比べて自分の給料は少ない」と、不満を募らせるケースも多いと推測できます。
4位 職場の人間関係
- 人間関係が悪く、考えるだけで精神的に辛かったから(20代 女性)
- 上司との相性が悪かったから(20代 女性)
- パワハラがすごく、事務所内に怒号が飛び交っていたりしていたので、精神衛生上良くないと思った(20代 女性)
会社は働く場所ですから、「気の合う人とでなければ仕事ができない」というのはあまり望ましくありません。
とはいえ、上司や同僚の存在は、仕事のモチベーションや精神面に大きな影響を与えます。
そのため、職場での人間関係が悪化すると、仕事への意欲が低下したり、会社にいる時間が苦痛になったりすることも。
当アンケートでは、「職場の人間関係」が転職のきっかけになったと答えた人の4割以上が、パワハラなどのハラスメントを受けた経験があると回答しています。
職場の人間関係が転職理由となる背景には、単なる相性の問題だけでなく、深刻な要因が潜んでいることがわかります。
5位 スキルアップしたい
- 営業として慣れてきたタイミングで、さらに難しい業界や媒体の営業に挑戦したいと感じ行動した(20代 男性)
- 新しい環境で挑戦し、自分のスキルを活かしたいと思いました(20代 男性)
- 業務を通じて得られる成長や経験が思っていたよりも限定的で、自分がもっと成長できる環境を求めるようになりました(20代 女性)
前向きな転職理由である「スキルアップしたい」が5位にランクインしました。
「より難易度の高い仕事に挑戦したい」「もっと成長したい」など、さらなるスキルの習得や自己成長の機会を求めて転職を決意した人もいるようです。
とくに、「現職の環境や仕事内容ではスキルアップが難しいため転職を決意した」という声が目立ちました。
第二新卒での転職をしたほうがいいと思う人は86.7%
「第二新卒での転職はしたほうがいいと思うか」という質問に対し、「したほうがいい」と答えた人は86.7%にのぼりました。
実際に第二新卒のタイミングで転職した人の多くが、転職によるメリットを実感しているとわかります。
では「なぜ第二新卒で転職したほうがいいと思うのか」、その理由を聞いてみました。
第二新卒での転職をした方がいい理由1位は「第二新卒は需要が高い」
第二新卒で転職をしたほうがいい理由を聞いたところ、もっとも多かった回答は「第二新卒は需要が高い(15.2%)」でした。
2位「合わない職場に居続ける必要はない(13.9%)」、3位「早めに転職するほうがメリットが多い(12.0%)」と続きます。
ランキング全体から、第二新卒として早めに行動を起こすことが、将来のキャリアを広げたり、自分らしく前向きに働ける環境を見つけるうえで役立つと考えられていることが伺えます。
1位 第二新卒は需要が高い
- 社会人としてのマナーはある程度ありつつ、若くて伸び代がある第二新卒は需要があり、希望の企業に転職しやすいと感じるから(30代 女性)
- 年齢を武器として使える転職時期が、第二新卒だから(20代 男性)
- 若いというのが何より武器になって、ポテンシャル採用で結構大手とかも狙えるので(20代 男性)
1位は「第二新卒は需要が高い」でした。
転職経験者が実感しているとおり、第二新卒を歓迎する企業は多くあります。
主な理由は次の3つです。
- 基本的なビジネスマナーが身についており、教育コストがかかりにくい
- 若いため、将来の成長を期待できる「ポテンシャル採用」が可能
- 社会人経験が浅く、前職の慣習に染まっていないため、新しい環境や仕事に柔軟に対応できる
新卒でも職務経験が長いわけでもない「第二新卒」ならではのポテンシャルや柔軟性に、多くの企業が価値を見出しています。
また近年は、企業が新卒の必要採用数を確保できなかったり、早期退職した新卒者の補充が必要になったりすることから、第二新卒の採用を積極的に行っているケースも少なくありません。
2位 合わない職場に居続ける必要はない
- 我慢して仕事を続けるよりも思い切って環境を変えたほうが良いと思うから(30代 男性)
- 人生は1度きり、不満を抱いたままで会社にとどまるのは損をしている(40代 男性)
- 嫌なことをずっと耐えて日々生活するのであれば、すぐに見切りをつけて自分の輝ける場を新たに探したほうがよい(50代以上 男性)
「つらい状況や納得いかない状況に耐えて、新卒で入った会社にしがみつく必要はない」と考える人も多くなりました。
ひと昔前と違い、今は転職がデメリットとはならない時代。
社会の変化に伴って働き方やキャリアの選択肢が多様化し、自分に合った環境を求めて転職を選ぶことが一般的になりつつあるからです。
さらに、第二新卒を歓迎する企業も増えているため、第二新卒での転職が不利になることが少ないことも理由と言えるでしょう。
3位 早めに転職するほうがメリットが多い
- 違うなと思ったら行動は早い方が良い。ダラダラと残ると辞めにくくなってしまうから(30代 女性)
- 自分に合わないと感じたり、続けていく自信が無くなったら早めに決断して次に進んだほうがいい(30代 男性)
- 新しいことを始めたいなら早い方がいいので(30代 女性)
ダメだと思ったら、できるだけ早く転職したほうがメリットが大きいと考えている人も。
年齢を経るほど、即戦力としての経験やスキルを問われることも多くなります。
一方、第二新卒の時期であれば意欲や将来性を評価される「ポテンシャル採用」があるので、未経験の分野にも挑戦しやすくなります。
また前職での経験が長くなると、新しい職場や仕事への順応が難しくなるケースも。
職歴が浅いうちにであれば、新しい環境にもスムーズに適応しやすいと言えます。
4位 ストレスを減らせる
- 結果的にいい会社に就職できれば精神的ストレスがなくなる(20代 女性)
- 仕事内容や人間関係などが明らかに自分と合わないなと思ったらそのまま働き続けるのはストレスになるだけで自分のためにはならないと思うから。それなら若いうちに早めに見切りを付けて自分に合う会社を見つける方がいいと思う(20代 男性)
- 向いてないものを頑張って続けて精神を病んでしまう方も多いのではないかと思う。そうなるとこれからの人生、生きづらくなってしまいます。長く続けることばかりが大切ではなく、身体を壊さずに無理なくやっていけることが重要だと思う(30代 女性)
「適性にあった仕事」や「良好な人間関係を築ける職場」に転職することで、ストレスを減らすことができます。
自分に向いていない仕事を続けたり、人間関係の悪い職場にいることはつらいもの。
毎日のストレスがボディーブローのように効いてきて、心身に負担が蓄積すると健康を害してしまうことさえあります。
心身を壊してまで新卒の就職先に居続ける必要はないと考える人も多くなりました。
5位 キャリアの再構築がしやすい
- 早期に軌道修正することでその後のキャリアの満足度を高めることができるから(20代 女性)
- 早いうちに転職してデメリットはほとんどない。これからは自分でキャリアを作っていく時代だから、納得いく職が見つかるまで転職していいと思う(20代 女性)
- まだ若いのでもし他に行って違うなと思った時に修正しやすいから(40代 女性)
現在の仕事やキャリアの方向性を見直すことが、第二新卒のタイミングであれば比較的しやすいと考える人も多くなりました。
職歴の浅い第二新卒の時期は、特定の職種や業種・仕事内容などにこだわりをもっていないケースが多く、新しい道を選びやすい傾向にあります。
また、第二新卒には今後の成長やポテンシャルを期待して採用する企業も多いため、未経験でも採用のハードルは比較的低めです。
そのため第二新卒の時期は、キャリアの方向転換をするには良いタイミングだと言えるでしょう。
同率5位 経験を積み視野を広げられる
- 何に向いているかを知るには様々な経験が必要だと思う(30代 女性)
- 失敗できるうちに色々な業種を試しておいた方が、その後、自分にとって良い選択を選び取りやすくなるため(20代 女性)
- 一つの場所にとどまる必要はないと思うから。経験は多い方がいい(30代 女性)
「自分にどんな仕事が向いているかを知るには、いろいろな経験をしてみることが必要」と考えている人もいました。
一つの会社で働いただけでは、自分の適性を知ることは難しいかもしれません。
失敗が大きな痛手にならない若いうちに様々な仕事を経験することが、今後のキャリア選択に役立つのではないでしょうか。
まとめ
職歴が浅い第二新卒での転職について、不安を感じる人は多いかもしれません。
しかし、転職経験者の8割以上が「第二新卒での転職はしたほうがいい」と回答しているとおり、第二新卒のうちに早めに行動することは、将来のキャリア形成や自分に合った働き方を見つけるうえで大きなメリットがあります。
さらに近年は、第二新卒を積極的に採用したいと考えている企業も増えています。
現職に不満がある第二新卒の方は、自分に合った環境を見つけるために転職も視野に入れて一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。