常用型派遣とは?登録型派遣や一般企業の正社員との違いやメリット・デメリット面の比較
常用型派遣は社員になれる派遣と聞きますが、
- 常用型派遣ってなに?
- 社員ってホントに正社員なの?
- 無期雇用派遣との違いは?
といった疑問もわいてくるでしょう。
常用型派遣とは、派遣会社の社員として企業へ派遣される働き方です。
派遣社員の46.1%、半数近い割合が常用型派遣として働いています。
常用型派遣の場合、たしかに正社員になれることもありますが、一般企業の正社員とは違いますし、向き不向きがあります。
具体的には以下の人が常用型派遣に向いているでしょう。
- 安定雇用の派遣で働きたい
- はじめから高い月給が欲しい
- 転職は考えていない
- 重い責任は負いたくない
- 新しい環境に馴染める
- 自由度の低い職場選択が苦にならない
- 正社員にはこだわらない
- 昇給しにくくても構わない
「なぜ、向いているのか?」がわかる理由としては、「常用型派遣の特徴」を知ることや、「一般企業の正社員や登録型派遣と比較」することで、常用型派遣のメリット、デメリットが明確になったためです。
この記事を読み終えるころには、「常用型派遣に申し込んだ方が良いのか?」「常用型派遣として働くのに適した派遣会社?」を、あなた自身で判断できるようになっていることでしょう。
常用型派遣とは派遣会社に直接雇用される派遣の仕組み
常用型派遣(以下、常用型)とは、派遣会社に社員として直接雇用される派遣の仕組みとなります。
派遣と言われてイメージされがちな、派遣会社で登録をする「登録型派遣(以下、登録型)」とは違います。
常用型と登録型の大きな違いを一覧にしました。
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常用型派遣 |
登録型派遣 |
雇用形態 |
直接雇用 |
間接雇用 |
派遣会社ですること |
面接・選考 |
登録 |
雇用されるタイミング |
合格内定後 |
派遣先が決まった時 |
契約期間 |
※無期 |
有期 |
※言葉どおり無期の契約と、反復継続や更新により事実上期間の定めがなく無期とみなされる有期契約があります。
派遣会社の社員にふさわしいか判断される選考があり、登録型では禁止されている事前面接も行われます。
チェックされる項目は、
など多岐にわたります。
「特定派遣」が常用型派遣だったのは2015年以前となる
2015年以前は、エンジニア系の理系専門職を取り扱う「特定派遣」という派遣方法を「常用型派遣」と呼んでいました。
特定派遣が2015年9月の法改正で禁止されたため「常用型派遣は廃止された」と言われることもあります。
法改正以降、「常用型派遣」は会社に常用されて(続けて雇われて)いる派遣のことを指します。
エンジニアだけでなく、事務、介護、薬剤師など、さまざまな職種の常用型があります。
「無期雇用派遣」は常用型派遣の一種となる
2012年の法改正で、常用型の一種に無期雇用派遣という言葉ができました。
一定の条件がそろえば、無期転換ルールを使って誰でも無期契約の派遣になれるようになったためです。
無期転換ルールや無期雇用派遣について詳しくは「無期転換はデメリットだらけ!メリットがある転換型の無期雇用派遣はアデコ「ハケン2.5」だけ」の記事にまとめてあります。
ただ、常用型であれば無期雇用派遣というわけではないため、詳しくは次の章で説明しますね。
「正社員型派遣」は常用型派遣の一種となる
派遣会社の正社員になった常用型は正社員型派遣とも呼ばれます。
常用型なら必ずしも派遣会社の正社員になれるわけではありません。
無期雇用派遣についてと合わせて、次の章で説明します。
無期雇用の形を取っている正社員の常用型派遣は約16%
無期雇用である「正社員の常用型派遣」割合は、派遣全体の15.7%(約16%)です。
常用型派遣には以下の2種類があります。
厚生労働省「平成 29 年派遣労働者実態調査の概況」によると、派遣社員のうち常用型派遣の割合は46.1%と5割弱となっています。
常用型派遣46.1%のうち、期間の定めがある=契約社員は65.9%に上ります。
常用型派遣のうち期間の定めがない34.1%は、無期雇用派遣と呼ばれます。
計算してみると、46.1%×34.1%=15.7%なことから、派遣全体の割合のうち、15.7%が無期雇用派遣となるわけですね。
ただ、常用型派遣で無期雇用だからと言って、正社員とは限りません。
無期転換ルールを使って無期転換しただけの、正社員になれない無期雇用派遣も増えつつあるからです。
常用型派遣の正社員になれるのは、派遣全体の16%よりも少ない、ほんの一握りの人だけと言えます。
ただ、正社員になれなくても常用型派遣にはメリットがあります。
メリットを理由に、厚生労働省の平成24年「派遣労働者実態調査」によると、80.4%の人が常用型を希望しています。
エンジニアや事務など、職種に限らずメリットやデメリットは同じため、詳しく説明しますね。
常用型派遣を登録型派遣と比較してわかるメリット4つ
常用型を登録型と比較した時のメリットは4つあります。
- 同じ派遣先で3年超えて働ける
- 待遇が良い
- 雇用が安定する
- 平均的な月給が23,840円高い
常用型派遣は同じ派遣先で3年超は働ける
常用型は3年ルールに縛られないため、同じ派遣先で3年を超えて働くこともできます。
3年ルールとは、2015年に労働者派遣法によって定められた、3年までしか同じ会社では派遣として働けない決まりです。
登録型は3年ルールに縛られるため、3年以内に別の部署へ移らなければなりません。
常用型は期間を気にしなくて済むため、同じ職場で長く働き続けたい人には魅力でしょう。
常用型派遣は金銭面での待遇が良い傾向がある
常用型は金銭面での待遇が良い傾向があるのも特徴です。
給料が基本的には月給となるため、登録型とは違って無給の待機期間がありません。
登録型の場合、無給の期間が長引くと休業手当の手取りは6割まで減る可能性はありますが、常用型の場合には派遣先で働いていない期間も給料がもらえます。
ボーナスや交通費といった手当もあり、待遇が良いのが一般的です。
注意 2020年4月から登録型派遣の待遇が改善
2020年4月の派遣法改正によって、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を解消するため「同一労働同一賃金」が導入され、登録型の派遣社員にもボーナスや交通費が支給されるようになりました。
ただし支給方法は、待遇決定方式や就業規則によって異なります。
常用型派遣は雇用が安定しやすい
契約が切れたら雇用の無くなる登録型と違い、常用型は退職するまで雇用期間が続きます。
派遣会社の社員となるため、登録型に比べると雇用が安定しやすいといえるでしょう。
また、年末年始やGWであってもお給料がもらえるため、登録型に比べて1ヶ月あたりの給料が多い特徴があります。
常用型派遣は平均的な1ヶ月の給料が登録型派遣よりも23,840円高い
1ヶ月あたりの平均的な給料は、常用型の方が登録型派遣よりも23,840円高いです。
なぜなら、月給を時給換算した時の時給平均が、常用型の方が149円高いからです。
厚生労働省「平成 29 年派遣労働者実態調査の概況」によると、時給換算平均は登録型が1,297円、常用型が1,446円でした。
1日8時間、月に20日働くと仮定すると、
- 登録型は1,297×8×20=207,520円
- 常用型は1,446×8×20=231,360円
となるため、常用型の方が23,840円多くなります。
常用型は登録型に比べると、雇用が安定していて待遇が良く、平均的な給料も高い、メリットいっぱいの働き方です。
給料は月給制で、一般的に夏と冬の2回ボーナスが支給され、同じ場所で社員として働ける…となると、一般企業の正社員と近い感じがします。
しかし、一般企業の正社員とは全く異なるため、注意が必要です。
常用型派遣と一般企業の正社員の比較でわかるデメリット3つ
常用型は一般企業の正社員と比較すると以下の3つのデメリットがあります。
- 仕事の実績が作りにくい
- 勤務先の変わる可能性が高い
- 給与が少ない
常用型はあくまで「派遣会社(派遣元)の社員」であって、「派遣先となる一般企業の社員」とでは雇用主と勤務先が異なるためです。
常用型派遣と一般企業の正社員の雇用主と勤務先は、それぞれ以下になります。
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常用型派遣 |
一般企業の正社員 |
雇用主 |
派遣会社 |
勤務先 |
勤務先 |
派遣先 |
勤務先 |
一般企業の正社員は、勤務先に雇用されて、その勤務先で働きます。
常用型は派遣会社に雇用されて派遣先で働くため、雇用主と勤務先が異なります。
常用型派遣は仕事の実績が作りにくい
常用型の業務内容は登録型に近く、責任の重い仕事は任せられにくいため、仕事の実績が作りにくいです。
なぜなら、派遣先から見れば、常用型も登録型も変わらない「派遣会社から派遣されてきた人」だからです。
一般企業の正社員のように、長期的な視点からキャリアアップを期待できる仕事を任されることはありません。
キャリアを活かしての転職や再就職を考えている人には、常用型派遣は向いていないと言えます。
常用型派遣は勤務先の変わる可能性が高い
常用型は3年以上同じ派遣先で働けますが、勤務先が変わる可能性は高くなります。
派遣先からの契約更新がなければ別の企業で働くことになるからです。
厚生労働省「平成 29 年派遣労働者実態調査の概況」によると現在の派遣先で同一の組織単位での継続就業期間は1年超3年以下が48.8%と最多です。
3年より長く同じ派遣先で働いている人は7.8%しかいません。
つまり、9割以上の確率で3年以内に別の派遣先へ移動となります。
新しい環境に馴染める人であれば常用型は向いていると言えますが、もしそうでないのであれば厳しいでしょう。
常用型派遣は一般企業の正社員と比べて給与が少ない
常用型は派遣会社の社員とはいえ、働き方は派遣なので、一般企業の正社員に比べると給料は少なくなります。
1日8時間、月20日働くと、常用型の平均月給は231,360円、平均年収は2,776,320円になります。
一方、国税庁の「民間給与実態調査」によると正社員の平均年収は487万円です。
常用型の平均年収は、一般企業における正社員の平均年収6割にも満たない金額です。
同じ職場で働く社員という立場ではあっても、給料には隔たりがありますね。
では、派遣会社の正社員と、常用型ならどうでしょう?
常用型派遣は派遣会社の正社員とも違う
常用型と派遣会社の正社員との間にも、違いがあります。
加入できる社会保険や、利用できる福利厚生などは同じです。
社内規定によって決まっている人事評価制度や賞与支給といったシステムが違います。
派遣先企業で派遣社員として働く常用型と、「派遣会社内で登録型のマッチング」といった派遣会社内の仕事をする正社員の違いですね。
常用型はあくまでも派遣の一形態です。
ここまで見てきたように、常用型は一般企業の正社員に比べるとデメリットが多い働き方です。
しかも、登録型と比べたデメリットもあるため、余すところなく見ていきましょう。
常用型派遣を登録型派遣を比較して見えたデメリット4つ
常用型と登録型を比較すると4つのデメリットがあります。
- 自由度が低い
- 派遣先の正社員になりにくい
- 収入があまり増えない
- 退職しにくい
常用型派遣は登録型派遣に比べて勤務地や勤務時間を選ぶ自由度が低い
常用型は派遣先の企業を派遣会社から指定されるため、登録型に比べて、勤務地や勤務時間を選ぶ自由度が低いです。
基本的には、以下のような仕事の条件を選べません。
- 勤務時間や曜日
- 勤務地
- 働く期間や時期
- 残業の有無や時間
- 仕事内容
勤務時間のほとんどが、週5のフルタイムに限定されます。
勤務地が遠い場合、引っ越しを余儀なくされることもあります。
有給はありますが、登録型のように契約満了後にまとまった長期休暇をとることはできません。
また、「残業無しの求人」を選べば全く残業せずに働ける登録型とは違って、派遣会社の社員であるため、すべての残業を断るのは難しいと言えます。
仕事内容の希望を出すことはできますが、派遣会社の手元にある仕事を割り振られるため、登録型に比べると希望は通りにくいです。
派遣で働く魅力のひとつ、「仕事を選ぶ自由度が低い」という点は、常用型のデメリットと言えますね。
常用型派遣は派遣先企業の正社員になりにくい
常用型は派遣先企業の正社員になりにくいのも特徴です。
なぜなら、常用型が派遣先の企業へ転職してしまうと、派遣会社は継続してお金を落としてくれる社員を失うことになるからです。
派遣先としても派遣会社との関係が崩れないよう、長い付き合いがあったり、複数人の派遣を受けていたりする場合は滅多に引き抜きを行いません。
登録型であれば、派遣先の正社員になりたい場合は
- 紹介予定派遣の制度
- 1年以上派遣される見込みがあれば、派遣先への直接雇用の依頼
があるため、登録型の方が常用型よりも派遣先の正社員になりやすいと言えます。
常用型派遣は長年勤めても収入があまり増えない
常用型は派遣会社の社員という扱いではありますが、長年勤めても収入はあまり増えません。
なぜなら、同じような職場で同じような業務をし続けるからです。
たとえば、事務仕事の場合、誰でもできる内容をする派遣社員に高額な給料は払えませんよね。
一方、登録型ならスキルを身につけることで、より高時給の求人へ挑戦していけます。
自分で仕事を選べない常用型は収入を増やすのが難しいと言えますね。
常用型派遣は退職しにくい
派遣先の正社員になりにくいだけでなく、「退職しにくい」のも、常用型のデメリットです。
常用型は登録型に比べ、派遣会社による囲い込みが行われやすいです。
そのため、退職を申し出たら強い説得が待っていると思っておいてください。
スムーズに退職したいなら「派遣先との契約終了日に合わせて辞めたい」旨を、3ヶ月前に派遣会社の担当者に伝えましょう。
常用型は派遣会社とは無期契約を結んでいますが、派遣先とは期間の区切りがあるのです。
派遣会社との複数回の面談を経て、1ヶ月前までには退職願を受理されるのが理想です。
派遣先には派遣会社が退職することを伝えてくれるため、自分で言う必要はありません。
常用型は派遣会社の社員のため、転職する場合は一般的な企業の正社員と同じ流れになります。
退職願を受け取ってもらえないけれど、「どうしてもいますぐ辞めたい!」という場合は、退職届は内容証明郵便を使って人事部に直接郵送すれば、2週間で辞められます。
しかし、派遣会社と揉める可能性も高い方法なため、おすすめはできません。
転職に使うエネルギーをとっておくためにも、期間に余裕をもって、誠意ある退職方法を選んでくださいね。
常用型派遣が向いている人の特徴一覧
常用型のメリットやデメリットを総合すると、向いている人の特徴を一覧表にすると以下になります。
- 安定雇用の派遣で働きたい
- はじめから高い月給が欲しい
- 転職は考えていない
- 重い責任は負いたくない
- 新しい環境に馴染める
- 自由度の低い職場選択が苦にならない
- 正社員にはこだわらない
- 昇給しにくくても構わない
ただ、二つや三つくらいなら当てはまらなくても、選ぶ派遣会社によっては、常用型があなたにぴったりな働き方になるかも知れません。
なぜなら、
- 必ず派遣会社の正社員になれる
- 昇給制度が整っている
- 派遣先での雇用をサポートしてくれる
など、デメリットをカバーしてメリットに変えている派遣会社が現れてきているからです。
次の章では、職種ごとに厳選した、おすすめの派遣会社を紹介します。
【職種別】常用型派遣がおすすめの派遣会社まとめ
常用型のデメリットをカバーしている、おすすめの派遣会社を職種別に紹介します。
3ヶ所とも、
という、待遇の良い派遣会社です。
エンジニアの常用型派遣なら「リクルートスタッフィング情報サービス」
リクルートスタッフィング情報サービスは、必ず正社員で雇用される、エンジニアとして働ける常用型派遣です。
派遣先はIT企業となり、ITエンジニアとしてのスキルを磨けます。
派遣なので雑用に時間をとられることなく、エンジニアとしての仕事を初めからできる点は魅力でしょう。
エンジニアは応募する時に「エンジニア経験6ヶ月以上」など、経験が必要となりがちのため、未経験からなれるのはメリットです。
キャリアアップやキャリアチェンジも応援してくれて、情報系の仕事に必要な資格の試験費は全額支給されます。
未経験からエンジニアの正社員になれる常用型派遣を目指すなら、リクルートスタッフィング情報サービスがおすすめです。
事務の常用型派遣ならアデコ「キャリアシード・エル」
アデコの「キャリアシード・エル」は必ず正社員になれる、事務として働ける常用型派遣です。
事務系は「常用型派遣」より「無期雇用派遣」と呼ばれることが多いため、ここでも無期雇用派遣と書きますね。
事務職の無期雇用派遣では全国でも高水準の初任給を誇り、昇給制度が整っていて、退職金制度もあります。
派遣先への転職サポートもしてくれるため、デメリットの少なさが際立ちますね。
「キャリアシード・エル」は前職が販売職やサービス業など、事務が未経験の人向けのサービスです。
経験者向けには、更に条件の良い「キャリアシード」というサービスもあります。
未経験から事務の正社員になれる無期雇用派遣を目指すなら、アデコの「キャリアシード・エル」がおすすめです。
事務の無期雇用派遣はここ数年、人気が出てきています。
最後に当記事の監修者、社労士事務所「志」代表の村井志穂氏からアドバイスいただいたのでご紹介します。
”派遣”とひとくくりに説明されることが多いですが、その中で、今回紹介されてる”常用型”や”登録型”、”紹介予定派遣”等、様々な種類があります。
各々の違いを理解して、自分に合った働き方はどれか、しっかりと精査しましょう。
同一労働同一賃金の導入により、正社員との格差がなくなりつつなっていくことが考えられますが、やはり、正社員に比べ不安定さがあるのは否めません。
だからこそ、知識をつけ、自分自身で納得した選択肢を選ぶことが大切です。
■監修者プロフィール
社労士事務所志代表
村井志穂(むらいしほ)氏
【社会保険労務士会登録番号】第23210035号
【愛知県社労士会登録番号】第2313540号
椙山女学園高等学校 椙山女学園大学卒業
人事労務関連のソフト会社に入社後、カスタマーサポート・マーケティング・システム開発に携わる。
社会保険労務士資格取得後は、システムエンジニアとして勤めつつ、自身の事務所を開業。システム開発の経験を活かした、Office製品を利用した業務効率化ツールの提供も行っている。